下水道管路の点検:スクリーニング調査とは?

スクリーニング調査とは

道路陥没事故や下水の溢れといったトラブルは、私たちの生活に大きな影響を与えます。その原因の一つに、地中に埋設されている下水道管路の老朽化や損傷が挙げられます。これらの問題を未然に防ぐため、下水道管路の点検は非常に重要です。

下水道管路の点検は、大きく分けて「スクリーニング調査」と「詳細調査」の2段階で行われることが一般的です。今回は、まず第一段階である「スクリーニング調査」について詳しく見ていきましょう。


スクリーニング調査の目的と役割

スクリーニング(screening)とは、「ふるいにかける」「選別する」という意味を持ちます。その名の通り、下水道管路のスクリーニング調査は、膨大な延長を持つ管路の中から、損傷や劣化の兆候がある箇所を効率的に見つけ出すことを目的としています。

日本全国には膨大な長さの下水道管が張り巡らされており、その全てを一度に詳細に点検することは、時間もコストも莫大にかかります。そのため、まずは広範囲を対象に大まかな異常を把握し、「どこを重点的に詳細調査すべきか」を判断するための「入り口」となるのが、スクリーニング調査なのです。


主なスクリーニング調査の方法

スクリーニング調査には、主に以下のような方法が用いられます。

1. TVカメラ調査(目視調査)

最も一般的な方法です。マンホールから小型のTVカメラを挿入し、管路内部の映像を記録しながら進みます。この映像を地上で確認し、以下の異変がないかをチェックします。

  • ひび割れや破損
  • 腐食
  • 管の継ぎ目のずれ(段差、開口)
  • 堆積物(土砂、油脂など)
  • 木の根の侵入
  • 他管の突出
  • 不明水(下水以外の水)の流入

近年では、AIを活用して映像から異常を自動で検知するシステムも導入され始めており、より効率的なスクリーニングが可能になっています。

2. 管口カメラ調査

マンホールから管の入り口付近をカメラで確認する方法です。管内にカメラを奥まで進める必要がないため、比較的短時間で多数の管路をチェックできます。ただし、管の奥深くの状況までは把握できないため、あくまで初期段階のスクリーニングとして用いられます。

3. その他(音響探査など)

管路の状況に応じて、音響を利用して管内の空洞や損傷を検知する方法が用いられることもあります。特に、水の入っている管路や、カメラが届きにくい場所などで補助的に活用されます。


スクリーニング調査の重要性

スクリーニング調査で異常が疑われる箇所が発見された場合、次に「詳細調査」が行われます。詳細調査では、より精密な機器や手法を用いて、損傷の程度や原因、緊急度などを詳細に分析し、修繕や改築の必要性を判断します。

つまり、スクリーニング調査は、下水道管路の健全性を効率的に把握し、将来的な事故やトラブルを未然に防ぐための「最初の、そして非常に重要なステップ」と言えます。この調査を定期的に行うことで、地域のインフラの安全が守られているのです。

私たちの足元を支える見えないインフラ、下水道管路。その健全な維持管理のために、日々様々な調査が行われていることを知っていただければ幸いです。