道路陥没事故を繰り返さないために


埼玉県で発生した道路陥没事故は、下水道管の老朽化や破損が主な原因とされています。特に、1983年に敷設された直径4.75メートルの鉄筋コンクリート製の下水道管が、硫化水素による腐食などで損傷し、周囲の土砂が管路内に引き込まれて空洞ができた可能性が指摘されています。このような事故を防ぐための対策は、複数考えられます。

主な対策

  1. 下水道管の点検・調査の強化と計画的な更新・修繕:
    • 老朽化対策の加速: 多くの下水道管が耐用年数(約50年)に近づいており、計画的な点検と修繕・更新が不可欠です。予算の確保と人員の育成が課題とされています。
    • 詳細な調査手法の導入: 小型カメラやドローン、管内点検ロボットなどを用いた精密な調査により、管路内部の腐食や破損、継ぎ目の不良などを早期に発見します。特に、カーブしている場所など、硫化水素が発生しやすいとされる箇所は重点的に調査が必要です。
    • 地中レーダー探査の活用: 道路の路面下空洞調査に地中レーダー探査を導入し、目に見えない地下の空洞を早期に発見・把握することで、陥没事故を未然に防ぎます。AIを活用したデータ解析も有効です。
    • 予防保全への転換: 事故が起きてから対応するのではなく、定期的な点検と修繕により、施設の健全性を維持し、道路陥没のリスクを低減する「予防保全型」の維持管理を推進します。
  2. 硫化水素による腐食対策:
    • 下水道管内で発生する硫化水素がコンクリートを腐食させる大きな要因とされています。硫化水素の発生を抑制する技術や、腐食に強い素材への切り替えなどが有効です。
  3. 地盤状況の把握と対策:
    • 埼玉県の事故現場のように、元々湿地帯で軟弱な地盤である場合、下水道管の損傷と相まって大規模な陥没につながりやすいとされています。地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良などの対策を講じることも重要です。
  4. 新技術の導入:
    • IoTセンサーによる常時監視システムや、管路を掘り起こすことなく修繕できる「管路更生システム(SPR工法など)」といった新技術の積極的な導入が、効率的かつ効果的な対策として期待されています。
  5. 情報共有と連携:
    • 地方自治体、国土交通省、関連事業者などが情報を共有し、連携して対策を進めることが重要です。国土交通省は今回の事故を受けて、全国の下水道管の緊急点検を要請し、再発防止に向けた対策検討委員会を設置しています。

これらの対策を総合的に進めることで、下水道管の破損に起因する道路陥没事故のリスクを低減し、安全な社会インフラを維持することが可能になります。